学生時代('89-'95)の研究
以下に,学生時代の研究について簡単にまとめてみました.研究職を目指す人の参考になれば
幸いです.自分自身にとっても,初心を忘れないための記しとしたいと思います.
1.学部では剛体の動的挙動の研究を行う.剛体床を水平と上下に動かしたとき,剛体床上の
剛体がどのように動くかをシミュレートした.プログラム(フォートラン)は自作してお
り,このとき学んだプログラミングの技術・おもしろさは,それからの研究生活にも大い
に役立っている.(1989-1990)
2.修士では常時微動の研究に携わる.このころ,JR総合研究所の中村豊氏が提案していた
常時微動の水平動と上下動のスペクトル比で地盤特性を推定する方法が注目されていた.
この方法は,実測的には良好な結果をもたらしていたが,理論的背景がかなり不足してい
た.そこで,東京理科大の東平光生先生が開発した,時間領域境界要素法−有限要素法(
2D)を用いて常時微動の数値シミュレーションを行い,理論的背景の補強を試みた.こ
の際のアプローチは常時微動を実体波として行った.これは,常時微動には表面波が卓越
しているという現実と乖離しており,結果的には失敗した研究であった.しかし,常時微
動の実測・解析,数値解析を通し,多くのことを学び,現在の研究力が養われた.(1990
-1992)
3.博士では修士の研究を継続した.ここでは,常時微動を表面波とした観点からのアプロー
チし,一応の成功をおさめたと思われる.表面波はレイリー波,ラブ波に分類できる.常
時微動にもレイリー波が多く含まれており,現在では,常時微動に含まれているレイリー
波の特性を抽出し,この特性を説明する地下構造を求めるという,地下構造推定方法が確
立しつつある.筆者もこの方法に興味があり,最近,これに関する論文(1996, 1998)を
か発表している.なお,表面波を理解するためには,関数論等の数学の知識が必要であり,
このとき数学の力が養われた.(1992-1995)
4.恩師について
学部での指導教官は臼木恒雄先生でした.他大学に行くということで指導しにくかったの
ではないかと勝手に想像しています.あまり指導を受けた記憶がありません.学生には,
細かい指導を受けて伸びるタイプと,放任されて伸びるタイプの2タイプがあると思いま
す.私は,おそらく後者のタイプだと思います.先生は,それを見抜かれていたのかもし
れません.
修士・博士での指導教官は大町達夫先生でした.先生は独特な先生です.失礼ですが,当
時は先生の偉大さが分かりませんでした.というよりも,意識の深層ではその偉大さを分
かっていたのに,自分の劣等感がそれをもみ消していたような気がします.いずれにせよ,
先生の発想力,研究に対する姿勢は現在の自分に大きな影響を与えています.現在の研究
も,先生の影響が強く残っています.しかし,先生は先生,私は私です.先生へ恩返しす
るためにも,自分色の研究をする必要があります.
5.先輩・友人について
修士のとき大町研の研究員であった東平先生(現理科大)には大変お世話になりました.
先生は数学が非常に得意で,数学が好きだった私も,大いに刺激を受けました.また,先
生の学問に対する真摯な態度には大いに感化を受けました.先生のおっしゃっていた「学
問の世界に生きる」は私のモットーとしています.当時,先生は佐藤工業の研究所に勤め
ておりましたが,現在は私の母校である理科大の教員をしております.これも何かの縁で
しょうか.
修士・博士での同級生,茂木秀則君(現埼玉大)は私にとって重要な存在でした.彼は頭
脳明晰でしたが,棘もありました.お互いよく議論をしていましたが,同時に衝突もよく
していました.私は,議論の後,自分の主張が正しいことを立証するため,かなりの集中
力をもって勉強していました.この負けず嫌いは,研究者にとって非常に重要な資質では
ないかと思います.
(1998.3.6)
他にも大きな影響受けた先生,友人もたくさんいます.それについては今後書いていきた
いとおもいます.